時間は伸び縮みする
ある新聞のエッセイを読んでいたら、ピアニストの仲道郁代さんがこんなことを書いていた。幼少から1日8時間以上の練習を欠かさずやってきたが、子どもが生まれたことでとてもその練習時間をつくることができなくなった。そこで1日を3日に分割して、1日を3日分として生きるようにした。そうすれば7日後までにしなければならないが時間が足りないと思っても、21日分のことができる、と。
読んだとき、同じようなイメージを持ったことがある気がした。うまく説明できないが、時間は伸びるのだ。残り時間がどんなに少なくても、その短い時間の中で考えをまとめたり、最低限の大事なことを覚えたり、段取りを一瞬で思い描いたりできるときがある。砂時計の落ちる速さが急にゆっくりとスローモーションになるような・・つまり時間が伸びる感覚。もちろんいつもそんな事が起きる訳でもない。期限ぎりぎりで切羽詰まっている、精神的にも追い込まれている、そんな状態で起こるかどうか。でもそれには相当な集中と、その集中を作るための準備がないとそもそも無理ではないか。これをお子さんが生まれてから20年継続されてきた仲道さんは正直すごすぎると思う。
一方で、あっという間に時間がすぎるときもある。楽しいことを夢中になっている時はいいけれど、なんとなくネットサーフィンをしたり、おやつを食べたり、片付けをしたりしている間に気が付くと夕方になっているなんてこともよくある。貴重な休日だったのに、もったいなかったと悔やんでも後の祭り。こんなときは時間が拡散してしまった、というか縮んでしまった、と感じるのです。